病識と予防注射

kosodate_1

今年はだらだらとインフルエンザの流行が続きましたが皆様いかがですか。それと、また新しいインフルエンザが発生しましたね。

さて、子供は三歳を過ぎると、病気の時「自分が今苦しいのは病気になったからだ」と理解できるようになります。これを「病識がある」と表現します。自分が病気だということを本人が知っている、という意味です。喘息の発作の時などは「苦しいのは病気のせいで、点滴すると楽になる。だから針を刺されて痛くても我慢しよう」と考え、自ら「点滴をしてほしい」と訴えることさえあります。

このような病識のある子供を予防注射で病院に連れて行く時は、病気にならないための注射を受けに行くのだと、しっかり言い聞かせなければなりません。本人は注射などされるはずはないと思っているからです。
ところが、このことを言えない母親が非常に多いのです。子供に遠慮し、泣かれたり嫌がられたりするのが怖いからです。ここで、何も知らず病院に来て予防注射をされてしまうまでの、子供の心の動きを見てみましょう。

ボクは病気でもないのに、病院に連れて来られた。お母さんは、当然だという顔をしてボクの手を引いて診察室に入った。先生がいつものように診察して「はい、よろしい」と言うと、看護師さんが、やおら注射器を持ってきて「さあ腕をまくって…」だと。「これは一体なに?ボクは病気じゃないのに。お母さん助けて…」と、泣きながらお母さんを見ると「静かにしなさいッ」。助けるどころか、ボクを押さえつけた。その瞬間、ブスッ…。「だましたなッ、みんなグルなんだ!」

このように子供の信頼を裏切ると、今度はその子が本当に病気になったときの治療に支障をきたすことが多いのです。子供にとっては当然ながら、それ以降に病院でされたり言われたりすることは、どれもこれも信用できなくて、診察時には泣き叫んで暴れるし、家では薬を拒絶するしで、手に負えなくなることがあるのです。

その上こういう事態は、母親の信用も落としてしまいます。信じていたお母さんが、医者とグルになってボクをだましたと思うからです。こうなると、病気や薬に関係のない日常の躾にも悪影響を及ぼし、育児を難しいものにしてしまいます。

病識のある子供を予防注射に連れて行くときは、子供がその意味を理解し納得していることが望ましいのですが、納得できないとしても、要は、注射をすることを親が子供にあらかじめきちんと伝えられるかどうかです。

子供は完全には理解できなくても、母親の言動やその場の雰囲気から多くのことを感じ取るものです。「この子はまだ小さいし、予防注射をすると言っても分からないだろう」と決めつけてはいけません。まして、暴れたりむずかったりされることを恐れて、何も言わずだまし討ちのように注射するのは、言語道断です。

親としての威厳を持って、きちんと子供に言い聞かせてから予防注射に連れて行きましょう。たとえ家から病院まで、延々と泣かれ続けたとしても、です。「だまされた」と子供に思わせないことが親子の信頼関係を強固にするのです。
つづく