新芽賞 『いざ、ふるさとへ!』 北川 琴花
ぼくの名前はサッケー。ぼくはここの場所がすごく気に入っているんだけど、どうしても行かなくちゃいけない所があるんだ。
えっ、どこに行くかって?『ふるさと』に帰るんだよ。どうやって子どものころにいた場所に帰るかって?『におい』だよ。あのなつかしい『におい』をたどって帰るんだ。スイ、スイ、スイ…。
「あ、別れ道だ!」
クン、クン、クン…。
「こっちかな?いやこっちかなぁ?うーん…こっちだ!」
スイ、スイ、スイ…。
おや、前に魚がいるぞ…あれはフナ達だ!
「おーい、何をしているんだい?」
「あ、サケくんだ。今、ご飯を食べているんだよ。きみも食べる?」
「ぼくは今、何も食べないんだ。」
「えー、こんなにおいしいのに?よく食べないでいられるねぇ」
(フナ達はサケがふるさとに帰る時、何も食べないことを知らなかったのか…)
「おーい、あっちにもご飯があるぞ。ういているけど…」
「わたしが食べるー!」
「待って、それは人間のわな!…あ、行っちゃた…」
「フナさん達はご飯を食べる分、大変なことがあるんだね」
「そうそう」
「みんな、こっちにあるご飯はワナじゃないよ。食べに行こう!」
「うん!サケさん、さようなら!」
「フナさん達も、さようなら!」
(色々大変そうだけど、仲間がいて楽しそうだなぁ…)スイ、スイ、スイ…
ねぇ、見てみて!前に大きな橋がある!その近くに赤や黄色の木があるよ!
「おーい、サッケー!」
「戻って来たんだ、サッケー!」
「サッケー、おそいぞ!」
「はやく来てー!」
あれはなつかしい仲間達の声だ!
「今行くよー!」
ザブン、ザブン、ザブン…。
そう、ここは水がだんだん冷たく、急になっていく流れにさからってでも帰りたかった、ぼくの『ふるさと』。そして仲間達がいる、ステキな場所。
「ただいま、石狩川!」