今そこにある危機
我々は普段何気なく生活を送っているが、身の回りには様々なアクシデントが
起こりうる危険性を孕むものが常につきまとう。
例えば、道を歩いていれば車に轢かれる可能性があるし、海水浴に行けば溺れてしまう事だってある。
除雪中に屋根から雪が落ちてきて亡くなってしまう事故も多い。
我が身にもそんな出来事があった。
それはある日便意を催し、ある施設のトイレを利用したときだった。
事を済ませた私は、いつものようにウォシュレットのボタンを押す。
そしてぬるま湯が私をめがけて飛んでくる。直撃の瞬間、私は恍惚の境地に至る。
・・・数分後、至福の時間を貪った私は、停止ボタンをいつものように押す。
が!しかし、ぬるま湯はいつものように止まってくれない。
「なぜだ!!??」
心の中でそう叫びながら停止ボタンを連打するが、非情にもぬるま湯は止まらない。
そんな中、私は閃いた。
それは【柔らか】のボタンで勢いを抑えることだ。
「これならば、私への(私の肛●への)ダメージを軽減できる」
「せめて【柔らか】は起動してくれ!!」
祈りを込めてボタンを押す。
・・・・柔らかくなった。神様ありがとう。
さて、ここからどうしたものか。
腰を少しずつ浮かせても着座センサーにひっかかっているので止まる気配はない。
勢いよく便座から離れても、多少の水がかかってしまいそうなので、そんな勇気も出ない。
うまくここから抜け出す方法はないのだろうか?
・・・いや、一つだけある。
【手】だ。
極力、上半身の力を使いたくはなかったがこの際仕方ない。
左手で受け止め、少し腰を浮かす。
右手でトイレットペーパーをつかみ付着した水分をふき取る。
そして左手を残し、体全体を便座からできるだけ遠ざける。
・・・止まった・・・。
が、左手で受けたぬるま湯の水しぶきでズボンはやや濡れ。
何とも言い知れぬ敗北感。
しかしこの敗北から学んだことがひとつある。
「着座センサーは左手のみだと認識しない。」