育児のための衣服の条件①

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赤ちゃんが生まれると最初に与えられるものは衣服です。それにしても衣、食、住というこの順番は面白いですね。食衣住でも、住食衣でも、衣住食でもないのです。

 赤ちゃんにとって、まず必要なものは衣であり、次が食つまりお乳、住は最後でいいのです。このことは私たちおとなにも当てはまるので、さらに興味深いものがあります。 

 ここで思い出されるのが「衣食足りて礼節を知る」という言葉です。その意味は、民の生活が安定すれば道徳心が高まって礼儀を知るようになる、というものですが、食べ物や衣服があり余っている今の日本には当てはまっていません。身障者用の駐車場に平気で駐車する若者や、ファミレスなどで帽子を脱がない中高年があふれています。

 そして面白いことに、日本のこの状況はモノとカネだけでは人格を涵養することはできないということを明確に示しています。さらに、人が礼節を知るための基礎となるものは、インプリンティング(連載第三十四回)とアタッチメント(同三十五回)、すなわち愛情豊かな母子関係と良好な愛着行動によってのみ礼節は身についていくのであって、「衣食と礼節とは無関係である」ということを証明しているのです。このことは、日本に観光に来てホテルのテレビまで盗んで帰るどこかの国の富裕層を見ると、さらにはっきりしますね。「お里が知れる」とはまさにこのことです。

 さて、赤ちゃんの衣服を選ぶに当たって私たちが念頭に置かなくてはならないこと、それはそんなに難しいことではありません。私たちが赤ちゃんになったつもりで考えればいいのです。私たちおとなにとって気持ちのいい衣服は、赤ちゃんにとっても気持ちがいいし、おとなが気持悪いものは赤ちゃんにとっても気持ちが悪いのです。

 大切なことは、赤ちゃんから子供まで、衣服については機能の良さにだけ重点を置くことです。色や柄にとらわれてはいけません。色や柄がどんなに気に入っても、子供にとって不便な衣服を着せてはいけません。子供の正常な発育を妨げ、ときには事故や病気の原因になるからです。

寒くないこと、暑くないこと
 衣服とは、もともと保温のために着るものなのですが、最近、薄着に過ぎる場合がわりと多くみられます。五ヶ月ぐらいまでの乳児に多いのですが、お乳はよく飲むのだけれど眠らない、泣いてばかりいる、という相談を受けることがあります。この中には薄着のために寒がっている場合があるので、もう一枚着せてみる、あるいは寝せる時に掛けるものを厚いものに換えるなどして様子を見るようにしてください。
 そして肌着ですが、肌着はどんなのがいいかというと、
・汗をよく吸収すること
・ある程度の伸びちぢみすること
・着たり脱いだりするときパチパチと静電気が起きないこと
・通気性がいいこと
 この四点が大切です。やはり木綿で作ってあるものが一番です。

 なお、新品の肌着は赤ちゃんに着せる前に必ず一回洗濯をしてから使うこと。理由はほんの少し付着している機械油でかぶれることがあるからです。