財布は軽く体重重く……

指折り数えてみたら、娘に会ったのは去年の11月だから、もう10か月も会っていなかった。これは新記録だ。たまにメールをしているので、こんなに顔を見ていないとは思わなかった。三泊四日。どこに行くより心がはずんでいたりして。子どもに会うって、こんなに嬉しいものだったとは。
平日で娘は仕事だから、夜まで会えない。まずはマンションに行って、掃除でもとメール出したら、「汚ないよ」と返事が来た。ドキドキしながらドアを開けたら……「荒れていた」。ワンルームにキッチンなので狭い。
洋服や本、CDを置く場所が少ないので積んであるのだ。仕方ない、と言えば仕方ない。ここで私はお掃除ならびに、洗濯おばさんに変身! 自分の家ならあまりやりたくないが、他なら張り切ることが判明。そんなにすぐに終わるわけもなく、娘との待ち合わせの時間が近づいてきた。

11keroko

待ち合わせは渋谷。平日なのに、護国神社祭よりも賑わっている。待ち合わせの場所に、ヨシモトのステージがあった。ビルの前には、芸人を出待ちする女の子がわんさといた。そこに一人で立つおばさんは、完全に浮いていた。

「ジャングルポケット」、「バース」が出て来ると皆、ワッと群がりプレゼントを渡したり写メールを撮ったりする長い列ができる。次に出て来た人は、顔は見たことあるけど名前がわからない。
そこに娘が登場。「あの人、誰だっけ」「知らない」これが10か月ぶりに会った、親子の会話。映画なら、ハグして「元気だったぁ」という展開になるだろう。歩き始めた娘に慌ててついて行って「どこに行くの」と聞くと、「洋服を見る」と言う。東京は、夜九時を過ぎても洋服屋さんが開いているんだ。

前を歩く娘を見ると、ほっそりしている。「痩せた?」と聞くと、初めてニッコリ笑って「わかった? この前、旭川の友達にバッタリ会ったら、痩せてて気が付かなかったって言われたさ……」。ここから親子の楽しい、普段通りの会話が始まった。

翌日はお休みをもらったと言うので、朝からお買い物。デパートの10時開店に合わせて、普段はなかなか起きない娘が、私より早く起きた。気合いが入っている。銀座三越の高級カフェで、紅茶とケーキ食べたら二人で五千円。
たまにだからいいさ。ランチをしたら二人で七千円。めったに来られないからいいさ。
娘は自分で行けない、でも行きたかった高級店を調べていたみたい。自分のお給料で、家賃や光熱費などを払ったら、やりくりが大変だろう。でも、「足りないからください」とは言ってこない。けなげな娘に、財布の紐がゆるくなるのは仕方がないだろう。朝から晩まで、一万八千歩、歩いた。すぐにお腹がすく娘と、何軒も食べ歩いた。こうして財布は軽く、体重重く……楽しい東京だった。