育児のための衣服の条件⑤

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オムツの当てかた

日本人が昔からやっていたことの中で間違っていたものの一つにオムツの当てかたがあります。とくに女の赤ちゃんには脚がすらりと真っすぐな女性になってほしいと願うあまり、腰から下を昆布巻きのようにグルグル巻きにする「巻きオムツ」をやる風習がありますが、あれはいけません。
このようにすると、赤ちゃんの両脚は「気をつけ」をしたように固定されてしまうので、自然な体位(お相撲さんが四股を踏んで身体を沈みこませたようなかたち=連載第九十回)を妨げて自由な運動ができなくなってしまうばかりか、股関節におさまっている大腿骨骨頭部を外側へ出す方向に力が働くので、股関節脱臼の原因の一つになるのです。また、紙オムツも同様の肢位になりやすいので要注意です。私の個人的な感触ですが、最近股関節脱臼が増加しているように思います。
オムツは股の間にだけ当たるようにするのが理想です。昔いう三角オムツが一番いいのですが、常に股が少し開いた形になるようにすること。こうすれば股関節脱臼の予防になるのです。腰の両側からしめつけて、両脚が真っすぐに伸びた形にならないように注意しましょう。
同様の注意点として、赤ちゃんを抱っこするときは必ずお母さんの膝をまたぐように、股が開いた形で抱くのがいいのです。そしてオンブするときも赤ちゃんの両脚はそろえないで、赤ちゃんの膝がお母さんの脇腹へくるような形で背負うようにしましょう。

オンブはまさに合理的

ここでオンブの利点をお話しします。赤ちゃんと一緒に移動するにはいろいろな方法があります。抱いて歩くのもいいのですが、これは長時間はできません。乳母車だとエスカレーターには乗れないし、電車やバスには持ち込みづらく、坂道や階段のあるところは力がいるし、雨や風の時も困ります。
長時間の移動に耐え、天候や道路の状態がどんなでもよく、しかも母と子にいい影響を与えるのはオンブです。オンブには次のような優れた利点があります。

一. 赤ちゃんの股が開いた形で固定できる。

二. 母の両手が使えるので、母が何かにつまずいた時でも赤ちゃんは安泰。(先年、前抱きで歩いていて母親がつまづいて転倒、赤ちゃんが母親の下敷きになり、私の病院の救急外来を受診した事例があります。検査の結果、赤ちゃんの頭蓋骨が骨折していました。前抱き移動は足下が見えづらく、常に危険を伴います。抱っこひもという装具も売っていますが、前抱き移動は絶対にやらないように)

三. 危険に遭遇した時、母は走ることができるので非常事態から素早く遠ざかることができる。

四. 赤ちゃんの体温や汗ばんだ状態を母が背中で感ずるので、赤ちゃんの健康状態がわかる。

五. 母の身体のぬくもり、声のひびきが赤ちゃんに直接つたわるので、スキンシップの点でよい。

六. 赤ちゃんは常に母と同じ方向を向いているので、母が今、何を考え、何をしようとしているのか赤ちゃんにわかり、母子の一体感が強くなる。