育児のための衣服の条件⑥
私たちは本当に進化した結果なの?
進化論によれば私たちの祖先といわれているアウストラロピテクスは、およそ四百万年前、人類への道を歩み始めたのだそうです。猿人の前足の五本の指のうち、親指とほかの四本の指とが向かい合うようになったことによって、前足は手となり道具を作ることができるようになったからだといわれています。
道具を使うようになったことが脳の発達をうながし、脳が発達したことがさらに指の動きを良くしていったと説明されています。すなわち、手の平や指の先で感じ取ったいろいろな情報や経験が、脳の発達と人類の進化の原動力となったのだ、というのです。このような極めて好都合な正のフィードバック(=結果が原因を増長させること)が働いて、猿人は人類へと進化したとのことです。
しかしこれは甚だ都合のいい話です。というのは、ゴリラやチンパンジーの祖先だといわれているプロコンスルという猿は、一二〇〇万年ぐらい前にいたそうですが、こちらはほとんど何の進化もせずに今のゴリラやチンパンジーに至っているといわれているからです。つまり一方は四百万年で人間まで進化したのに、もう一方はそれより八百万年も前から同じ環境にいるのに進化のチャンスが一度もなかったということになるわけですから。
しかも人類学では現代の人類である私たちもまだ進化を続けている最中で、このへんで止まるのではなく未来においてさらに高度な人類になる、その途中に私たちはいるというのです。しかしこれら過去や未来の推論は当てになるかどうかわかりません。なぜなら、それならば現代人は古代人よりすでに進化した存在だということになるし、ずっと見ていた人もいないのですから。
指なし手袋は頭を悪くする
とはいえ、以上のことは発育していく赤ちゃんに一応当てはまります。脳の発達の早い赤ちゃんは指を上手に使うようになるのが早いし、指を早くから使えば脳の発達が早くなるからです。
赤ちゃんは自分の手の平や指の先でいろいろな物、あるいは自分の身体のいろいろな部分に触れて、その触れた感触を覚えていきます。このことが赤ちゃんの脳が発達していく上で極めて重要な役割を演じています。
しかしこれは進化論に拠らなくても事実として存在していることです。すなわち指から脳へ、脳から指へという刺激の循環は何も正のフィードバックなどを持ち出すまでもなく、もともと赤ちゃんに内在しているシステムが最初の刺激によって解発される(スイッチ・オン)のであって、進歩するのではありません。赤ちゃんがいちいちゼロから進歩・進化するのでは、そのゆく末は知れたものになってしまうではありませんか。
さて、現実に戻りましょう。「赤ちゃんが顔をひっかくからなどと言って赤ちゃんに指なし手袋をはめる人がいますが、そうされると赤ちゃんは周りにあるいろいろな物や、自分自身の身体に直接触れることができなくなり、脳の発達にブレーキがかかってしまいます。だから赤ちゃんに指なし手袋をはめてはいけません。わざわざ言うまでもないことですが、赤ちゃんの指の爪は常にしっかり切っておくことです。