育児のための衣服の条件⑦
手の平と足の裏
ふだんの生活の中で私たちのまわりには、床に転がっている小さなオモチャなどをうっかり踏みそうになった時、足の裏の感じで一瞬にして踏むのを止めることのできる人と、そのままグッシャリと踏んでしまう人とがいます。
瞬間的に踏むのを止めることのできる人は足の裏の敏感な運動神経の鋭い人。グッシャリの人はもちろん鈍い人です。この違いは持って生まれた素質にもよりますが、もう一つ重要なことは、子どもの時から足の裏と爪先の感覚のトレーニングをどれぐらい受けてきたか、ということにも関係があります。
四本脚の動物はその四本とも同じような役目をするのに対して、人類の手と足にはそれぞれ別の役割があります。すなわち手は知能と直結し、足は運動機能と直結しているのです。
私たちは自分の足の裏と爪先からくる情報や経験によって、今立っている所は硬いのか軟らかいのか、乾いているのか湿っているのか、ザラザラなのかツルツルなのか、水平なのか斜面なのか、熱いのか冷たいのかなどを弁別します。そうしてこれらの情報や経験を記憶して、次に同じような所に立った時のために備えるのです。
このことは、地面や床の状態を目で見て推測したのとはまったく違うことなのです。またそれらを手で触れて感じたことともぜんぜん異なります。私たちの足の裏と爪先は、身体の他の部分では代りをすることのできない役目を持っています。
赤ちゃんが発育していく時、足の裏と爪先の役割がはっきりと出てくるのは、自分の身体には手とは違うものが二本ついていることがわかった時からです。あお向けに寝ている時、両手で自分の足をつかんで遊ぶようになったら、もうその赤ちゃんの足の仕事は始まっていると考えていいでしょう。
立って歩くことができるようになれば、さらに多量の情報と経験を足の裏と爪先から得て、赤ちゃんはそれらを運動機能の発達に役立てていきます。
靴下は運動神経を鈍くする
この発達の途中、足に靴下をはかされたらどうなるでしょう。まさに靴の底から足の裏をかくように、もどかしいことこの上ないでしょう。赤ちゃんに靴下をはかせるのは、自分の子どもの運動機能の発達をわざわざ遅らせることになるのです。赤ちゃんは可能なかぎり素足で育てましょう。
太ももから露出する必要はありませんが、くるぶしから先は出しておかなくてはいけません。私の経験では、素足で育てた赤ちゃんと、靴下をはかせて育てた赤ちゃんとの運動機能の発達の差、特に敏捷性の差は明らかで、生後十ヶ月ぐらいでそれがはっきりと出ます。赤ちゃんにとって手の平と足の裏は、目や耳に匹敵する重要な感覚器官なのです。また、赤ちゃんがハイハイを始めたら、できれば膝から下は出したほうがいいのです。膝の触覚はハイハイを早めます。
一般にお母さんたちは、カゼをひくといけないから靴下をはかせなくてはと思い込んでいるようですが、素足が原因となってカゼをひくことなどないし、カゼをひいている時でも素足が原因で悪化することはありません。