桜吹雪の中で

東京では桜吹雪、旭川では本当の吹雪だった。4月初め、東京に行ってきた。今回は、娘に会うのが目的ではなく、パーティーで歌う歌の打ち合わせと、練習が目的だった。娘は「もともとへたなんだから、練習しても無駄じゃないの」と鼻で笑ったけれど、無駄とわかっていても、努力する母の姿を見せておきたい。
東京に着いた時、桜が満開。娘のマンションの前の桜並木は、風が吹くとピンクの花びらが舞い、それは美しかった。桜を見ながら、もう6年前になる娘の大学の入学式を思い出した。引っ越し、入学式と二度、旭川と東京を往復し、忙しい中満開の桜の美しさに癒やされたのを思い出す。

keroko01

入学式の帰り道、カラスのフンを顔にかけられた。運がつくなんて言われたが、あれはショックだった。今回も東京に行く前、買物公園でおでこにフンをかけられた。たくさんの人が歩いているのに、何で私なんだ!娘に教えると「フン」と笑われたが、それってシャレ?久しぶりの娘の部屋は、思ったほど荒れていなかった。ちゃんとやっているじゃないか。台所には洗ってないお茶碗や鍋が、水につけられていた。見てみると、ラーメン、うどん、雑炊……んっ?いつから洗っていないんだ?
娘の仕事が終わる頃、会社の前で待ち合わせ。出て来る娘の姿は、なかなかカッコ良かった。同僚と満面の笑顔で「お疲れさま」と言い、私を見た時、いつもの無愛想な顔になった。何カ月、時間が空こうと、親子ってすぐに日常に戻れる。まるで、朝出かけていったかのように。「やせたんじゃない?」と言うと、「いやぁ」とニタッと笑った。「何でも好きな物、食べに行こう」と言うと、考えていたらしく迷うことなく一直線。熟成肉とワインのお店。高級そうだ。自分では行けないけれど、前を通るたびに、ママが来たらここに来ようと思っていたのだろう。そう思うと嬉しくなり、太っ腹な私は「何でも好きな物を、たくさん食べなさい」とメニューの値段を横目で見ながら言った。「これ頼んでいい?」「高いよ」と、いちいち聞いてくる。
一人で自分の給料で、親に助けを求めることなくやっている娘は、節約して堅実にやっているのだろう。そう思うと、なんだか愛しくて胸が熱くなる。私よりもずっと偉いじゃないか。
渋谷のオイスターバーに行きたいと言っていたけれど、お休みだった土曜日、表参道や新宿で洋服や靴などを買い、あんまり桜がきれいだから夜桜を見に行こうということになった。娘が幼稚園の年少さんの頃に行った、目黒川の桜。覚えているかと思ったら、全く覚えてなかった。中目黒の駅に降りると、ものすごい人。ラッシュアワーだ。そこに近づいて来た背の高い若い男性がいた……。