母の役目
年末年始は家族揃って過ごすものだと思っていた。娘が東京の大学に行っている時も、クリスマスに帰り、お正月を過ごして戻って行った。ところが就職した娘は、休みがないから帰って来ないという。これは一大事だ。結婚した時はおばあちゃんがいた。娘が生まれて四人になり、おばあちゃんが亡くなって三人になり、そして今年のお正月は、結婚して初めて夫婦二人で過ごすお正月になった。おせち料理を作るのも張り合いがない。
そうだ。送ってあげればいいんだと気付き、クリスマスが終わってから準備を始めた。ローストビーフ、煮豚、キンピラゴボウ、旨煮、イクラ、タコ、タラコ、ハム、かまぼこ、黒豆、数の子、鮭とば、お餅、餅焼き網。一月一日が休みだというので、一日の午前中に着くように、もし吹雪いて遅れたら困るので、一日早く送った。
ところが送った翌日、娘から「インフルエンザ中」というメールが来た。かわいそうにと様子を知りたくてメールをしたら、「一日まで仕事行けないからそっとしておいて」と返信が来た。年末の喧噪の中、熱を出して寝ているのか。
それなら一日到着ではなく、もっと早く荷物が到着するようにすれば良かったと思ったが、もう遅い。やきもきしているうちに元旦になり、娘からメールが来た。
「届いた。ありがとう」……それだけかい?あれがおいしかったとか、これも入ってて嬉しかったとか感想はないのかい。
娘の性格を一番良く知っている私なのに、過剰に期待をした私が馬鹿だった。
でも大丈夫そうで一安心。一月五日に札幌の自宅の除雪に行った。いつもは三人でやる除雪。今年は例年より雪の量が多い。玄関前の雪の山を写メで送ったら「ウケる」だって。おまけに「休みで浅草に来てる」だって。
心配してたのに。その後、また音沙汰がなく、しつこいメールに返事が来たのは一月二十三日。「もう元気だよ」って。そりゃこれだけ日にちがたてば元気にもなるさ。
そういえば、私も大学生の頃、母からしょっちゅう手紙や荷物が届いていたのに、ろくに返事もしなかったっけ。ついには出張のついでに父が様子を見に来たこともあったっけ。
渦中にいると、親の有り難みなんて気が付かないものだ。でもふと立ち止まった時や、困った時には思い出す。母に言えば何とかなるだろうと、絶対的な信頼感を持っている。それでいい。
母はいざという時の子どもの守り神なのだ。
一月末に娘からメールが 来た。「また風邪ひいた。なんか栄養のあるもんください」何がほしいのかと聞いたら「洗い流さないトリートメントとサッポロクラシック、カップ麺」これは栄養のある物ではない。私は御用聞きか。
でもいそいそと送る私。またメールが来た。「ラフォーレバーゲンだよ。変な服あったら買っといてあげる」こんなメールでも喜んでいる私。
どんな変な服が届くのか楽しみだ。娘のことだから、本当に変な服かも知れない。
こんにちは。これはコメント例です。
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